走馬灯で知った最後の言葉

　ホームの上を見る。

　立っている裕子を仰ぎ見る格好（かっこう）になった。

　裕子の隣に、もう一人女性の姿がある。落下しながらなので、誰なのかはわからない。

　顔はわからないが、あの女がおれのことをホームから押しだしたんだな、とわかった。

　達彦は、鉄のレールといくつもの石ころの上に落ちた。ぶつかった向こうずねと手のひらに、痛みが走る。

　すぐに立ち上がった。

　ホームに手をついて、飛び上がろうと思った。

　後ろ足を踏ん張ると、靴の下の石が、ごりっと動く感触が伝わってきた。体勢がくずれる。

　再び動きだそうとした達彦は、体の左側面に、ものすごい圧力を感じた。

　暴力的な衝撃が全身を駆け抜ける。

　達彦は、自分が電車にひかれたのがわかった。