結婚相手

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彼女の名前は斉藤裕子。 愛称「ユーコ」 僕、青柳信二が所属している大学の軽音楽同好会のマドンナ。 背は160cmで少し痩せているように見えるが、出ているところは出ている。 だからワンピースをなびかせて歩いているのを見るとドギマギしてしまう。 性格は少しおっとりしているが、いつもやさしく楽しい雰囲気を漂わせている。 だから、誰もがユーコに好意をもっていた。 残念なことに僕よりひとつ年上。 168cmの僕には少し大きい。 しかしユーコが選んだのは僕だった。 彼女は都内の私立女子大の三年生だった。 そんな彼女が我々のクラブに入ってきたのは、これまで僕達のクラブに在籍していた唯一の女性が卒業し、メンバーが男性だけになってしまったからだ。 軽音楽同好会なのだが、僕達のいるのは理工学部だけしかない国立大学。 もともと女性は少ないのだ。 他のクラブはというと、たいていは近隣の女子大学と一緒に活動している。 僕達のクラブは幸か不幸か女性のメンバーが必ずひとりいた。 その為その女性に遠慮してどこかの女子大学の同好会に声をかけるのは躊躇われていた。 だから3月にその唯一の女性メンバーが卒業すると、早速目をつけていた女子大学にアプローチし、4月から活動を共にすることになった。 その女子大学の軽音楽クラブのメンバーは12人。 僕達のクラブは8人しかいなかったのでクラブの雰囲気ははいっきに変わった。 それまで自己満足でジミに黙々とやっていた演奏が急にアップテンポになり派手になった。 可愛い女子大生がいっぱいやって来たのだから皆が張り切った。 その中でも一番人気がユーコだった。 誰もが何とか自分の彼女にしようと張り合っていた。 年下の僕は遠慮して彼女にアプローチをすることはしなかった。 しかし飲み会や演奏会がある度に、気がつくと彼女は僕の隣に座っていた。 そしてそれが当たり前になると、だれもが二人の仲を認めるようになった。 僕はユーコとつきあいだした。 何故だか判らないが、ユーコが傍にいるだけで暖かいやさしさに包まれるような安堵感があった。 ユーコにその事を言うと、ユーコも僕と一緒にいるのが不思議なくらい心が落着くと教えてくれた。 それまでもガールフレンドが全くいなかったわけではないが、そんな事は初めてだった。
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