最終章 好奇心の代償

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「さて、そう言ったものの……、あまりネタが集まらないもんだなぁ」 自分のデスクに向き直り、パソコンの画面を見ながら俺は呟いた。そう、意気揚々と始めたはいいがいきなり問題が発生してしまったのである。それは、記事に乗せる怪奇事件の情報が”少なすぎて”記事に出来ないことである。 最近、多くの奇怪事件が多発している。それは明らかに人が起こしたものでない、言うなれば妖怪やそれに類する存在によって引き起こされたのではないのか、という事例もいくつもあった。しかし、いかんせん目撃情報が乏しくどれが本当なのか、審議が不明のものも何件か存在した。 さらにきちんとした情報があっても既に警察によって解決されている物も何件かあったのだ。確か特殊犯罪を捜査する課が刑事部にできたようで彼らによって解決されている、との事だった。 さすがに情報に乏しいものを記事にする訳にもいかず、かといって一度解決しているものを載せるのもあまりにも短絡的すぎる。さてどうするか……、と俺は悩んでいるのだった。 「あー、なかなか決まんねえ!いったいどうすりゃいいんだ!?取材しようにも時間もないし、情報も少なすぎるし……」 そう言って頭をバリバリと掻く。すると、 「あ、辛川さんお疲れ様です。記事はどうですか?」 いきなり声を掛けられた。振り向くとそこには活発そうな女性が立っていた。ブラウンのポニーテール、カジュアルな服装をした女性記者。間違いない。 日比野夏実。現在うちのエースと言われている子だ。彼女がその大きな瞳でこちらを見ている。 「あ、ああ!何とかやってるんだけどなかなかね……」 そう言って笑って誤魔化す。やれやれ、年下の子に媚びうるみたいな行為をするとは俺も馬鹿だなあ。 夏実は大変そうですねと言うと、 「知り合いを紹介します?そういう情報をすごい持ってる探偵さんがいるんですよ!」 夏実が目を輝かせながら言う。俺はそれに若干戸惑いつつ、 「いやいや、さすがに夏実ちゃんに頼るわけにはいかないよ。自分でやらないと」 「それは残念です。でも何かあったら手伝いますからね」 俺はありがとうと返すと、彼女はいえいえ!と返し取材なのか、また出かけて行った。
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