およそ、数え切れないくらい。

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雑記の続き ヴァレッタ。王都から馬車で東に4日程行ったところにある。途中にはいくつか村や宿場があり、余程の足止めがなければ野宿はせずに済むだろう。 石と芸術の街と呼ばれ、その手の芸術家にとっては聖地のような扱いを受けていた。中でも芸術住宅街が有名で、芸術家たちの個性あふれる芸術品がたくさん置いてある。中には実際に住むこともできる家(芸術品)そのものも建ててある。 仮面の病。ベロニカお嬢が発症していると思われる病い。その症状は自分以外の人間の顔の区別がつかなくなり、皆同じ顔をしているように見えてしまうもので、事実彼女も「いつからかこの家の人以外はみんな同じ顔をするようになってしまった」と言っている。僕や領主様の顔ははっきりと分かるそうだが、あまり顔を合わせない家政婦たちの顔はボンヤリとしか判別つかないようだ。 精神に因る病気だそうで、手の施しようがないとまで言われたことがある。 お嬢の探すもの。以前一度だけ聞いてみたことがある。そうしたら彼女はイイ笑顔でこう言った。 『この街に住む人たちはみんな同じ顔をしているけれど、それはみんなが私の知らない何かで私を騙そうとしているからだって分かったんだ。差し出せと言ってもそんな物は知らないと言う。かといって仮面とかマスクをつけているわけではないし、背中とか本人からは見えない場所についているわけでもない。だからこう考えたんだ。身体の中に隠し持っているんじゃないか、とね』
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