エグリゴリの遺稿

神兵◎００◎

　大きなアタッシュケースを持ちながら疾駆するナチス党員のような制服を着た少年。
　少年の周辺は戦火で崩壊していった高層ビルばかりである。大都市の廃墟。
　少年は追っ手からアタッシュケースの中身を守るために全力で走りさる。
　ニヒト・クラウザー。それが少年の名である。
〓ニヒト〓
「俺らは奴らの教えにだまされていたのか？」
　軍神教。
　かつて世界中にあるあらゆる一神教、多神教を軍事力を以て１個の宗教団体として統合し統制した。
　それから１０００年以上の歴史を以て世界に君臨している世界最新の宗教である。
　軍神マークマルス。恐怖政治で始まったこの宗教は１０００年の経過すれば全人類の精神の支えになってしまった。
　ニヒトはその宗教の追っ手から逃げている。
〓？？？？〓
「改宗せよ！！！　この世にある全ての教えを総べて。大軍神マークマルス様のお言葉が行き渡る全世界の礎となりたまえ！！　改宗せよ！！」
　白鳥のような大きな白い翼を広げて巨大な大剣２本で２刀流を得意とする追っ手。
〓ニヒト〓
「マークマルスの僧兵――神兵！！　白堕天使（天使型）！！」
〓白堕天使〓
「我ら白堕天使！！　我らが使えし神は旧神ではない！！　偉大なる大軍神マークマルス様のみ！！」
　白堕天使は巨大な２本の大剣を力いっぱいに振りかざす。このままではニヒトは大剣によって八つ裂きにされてしまう。
　 奴らの狙いはアタッシュケースの中身。
ニヒトは複数の選択肢を考えている余裕すらない。
神兵と呼ばれる生物は軍神教が聖書や神話、伝承をベースに普通の人間を遺伝子操作をして生み出した。
白堕天使は2本の大剣でニヒトを追い詰めていく。
ニヒトは仕方なくのロックを解除する。
〓ニヒト〓
「恐竜時代、地球という沼の主として君臨し、そして自ら恐竜時代を終わらせた沼の主よ！！ ラジゴラオン！！」
軍神教が支配できたのはあくまで人類と人間の宗教のみである。
この白堕天使も知らない宗教があった。
ラジゴラオンは閻魔大王、魔王ルシファー、闇の神ハデスなど色々な悪役として呼ばれ、各宗教により悪役の親玉とされた。勿論、設定も改変されている。
アタッシュケースからいきなり何かが飛び出した。それは真っ黒な爬虫類のような肌のした腕だった。白堕天使はそれを切断しようと2本の大剣で叩き落とす。
しかし爬虫類の腕はどちらのかの大剣を手ごと握り潰す。