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そうして三日が経った。
里に残してきた妻は元気でいるだろうか。
三人の子は仲良くやっているだろうか。
不安はますばかり。
彼は二晩歩きに歩いたが、この草原は終わりのないものだった。
ただ、アバムは幸運なことに、草原に井戸を見つけた。
井戸は使われなくなってから、ずいぶんと日が経っているようで、木桶は半分朽ちかけており、風雨に曝されたままであった。
アバムは喉が乾いていた。
この草原にやってきてからというもの、彼は何も口にしていない。
井戸を見つけたとたんに、彼は夢中になって水を汲み始めた。
井戸の水は濁っていた。
しかし、のどが渇いていたのでアバムは気にすることなく、濁った水を腹が膨れるまで飲んだ。
しばらく、アバムは眠りについた。
夢の中でなら、妻や子にあえるだろうかと思ったが、それは叶わなかった。
空腹の為にすぐに目が覚めたからだ。
夜。
草原はとても寒かった。
アバムは井戸へりに寄りかかって震えていた。
麻の袈裟一枚では、心もとない夜だった。
草原の夜はコウロギの鳴く声でうるさかった。
寒さと空腹に耐えながら、アバムは妻と子のことをずっと思った。
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