0人が本棚に入れています
本棚に追加
……船の中では、既に優雅にパーティが始まっていた。
「まぁ!想像以上の賑わいね」
「そうだな、ここまでとは思ってなかったよ」
「私も」
……………僕らが、いや、ここにいるみんなのコースは、『アサヒナ主催、日帰り一周パーティ~豪華船で~』というものだ。
『天下のアサヒナ』と有名なだけあって、料理の質、従業員の対応、照明などの私たち客の細かいところの気配りは悪くない。
「……ねぇ、一緒に踊りましょうよ?」
他の人も踊ってることだし、と彼女は耳元でささやき、にっこり笑って、手を差し出す。
「そうだな、折角だし踊ろうか」
彼女の手を引き、ファーストポジションをとって、僕たちは周りを気にせず、踊り始める。
「……懐かしいわね、あなたとこうして踊るって」
「僕もそう思ってたところだよ」
彼女はうふふ、と笑み、僕も同じように笑う。……彼女の笑みが少しだけ寂しそうに、影を帯びていることに気づかないフリをして。
「結構、ここ料理に凝っているのね」
「メニュー数、多いよな」
「えぇ、びっくりしたわ……あなた、いつチケットを?」
「内緒」
「意地悪ね」
「……お互い様だろ?」
最初のコメントを投稿しよう!