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彼は気が付いた時には様々な計器とレバーやボタンが密集した窮屈な空間に居た。
――また、この夢だ……。
心底うんざりとした様子で彼はこの光景を見る。
目の前には日の光を強く反射する鉄の色をした生物には見えない無数の物体の群れが迫りくるのが見える。
耳障りな警告音が響く中、彼は素早くレバーを動かすと視点がズレ無数の鉄の色から通り過ぎる。
数対の鉄色の物体が彼を追いかけるように群れから離れる様に追いかけるのが確認し、それぞれに赤いマーカーが収束していく。
マーカーが収束しきった瞬間に彼は右手に握るレバーに着いたトリガーを小刻みに数回押し込んだ。
淡い青色の光弾が彼に向かうそれぞれの鉄色の物体に吸い込まれるように命中し、その物体を焼き切った。
――その後の事はもう分かっている……。早く目が覚めろ……!
その直後に先程と違う警告音が鳴り響き、女性の悲鳴が彼の居る空間に響いた。
レーダーを見やると複数の青く丸いマーカーの内一つが赤いバツ印へと変わった。
彼の記憶の中でこれを意味するのは、味方機の一体が撃墜されたこと。
更に鉄色の物体が自身に迫る。
トリガーを押し込みながら左手でスクリーンを操作し、剣の形をした物に触れ直ぐに左のレバーを動かす。
ギリギリまで迫った鉄色の物体を青い閃光が走り、それを切り裂いた。
トリガーを小刻みに連打しながらレバーを激しく動かしながら無数の鉄色の物体をことごとく消滅させていく。
だが、警告音は鳴りやまずレーダーには赤いバツ印が次々に浮かぶ。
やがては味方の反応もわずか三つだけとなってしまった。
(もう良いわ、貴方だけでも逃げなさい……!)
自身の居る空間に別の女性の声が聞こえる。
その声に向かって自身は何かを叫んでいた。
そして次の瞬間、彼女の悲鳴と共に彼女が乗った機体が無数の鉄色の物体に飲み込まれていった。
※
「――くっは……!」
全身を汗で濡らしながら彼、ルー=ヴァルトゼーミュラーは跳ね上がるように目を覚ました。
乱れる息を整え忌々しげに舌を打つ音が広すぎる自室に響いた。
時刻を確認すると丁度朝の五時半を刺している。
二度寝するには遅すぎるが起きるには早い時間だった。
ルーはため息をつきながらベットから降り、着替えの支度を始めるのだった。
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