20人が本棚に入れています
本棚に追加
/461ページ
♯
美怜と二人で走っていると、
「──おー美怜ちゃんじゃーん」
美怜の表情が強張る。その声の主を見ると、微かに見覚えのある男子。瑞生を傷つけた張本人だ。
「……アンタ、何様のつもり」
「そりゃあもちろん……ってお前!」
俺を確認すると男子は左右を何度も見回して、
「……あいつはいないな」
鶴木のことか。
「……」
美怜の手が微かに震えている。
「それはそうと美怜ちゃー……」
「行きましょう、妹さん」
「え……う、うん」
踵を返す。今ここで会話をするのは得策じゃない。
「お、おい……待てよ」
美怜の手を掴みかけたのでその手を捻り上げる。
「いだだ……!」
「これ、なんですか」
「は、離せ……!」
「……この前言った通りです」
携帯をチラつかせる。嫌だがボイスレコーダーから音をコピーしてある。
「ちっ……クソが」
そのまま男子は去っていった。
「……行きましょうか」
「………………」
美怜が困惑した顔で俺をみる。俺は何も知らぬふりで駆け出す。美怜は黙って並走した。
最初のコメントを投稿しよう!