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ぬいぐるみ
クラスメイトが、 クレーンゲームで取り過ぎたと、大量のぬいぐるみを学校に持ってきた。
名のあるキャラクターとかは一つもない、十把一絡げみたいなぬいぐるみで、ネットオークションに出しても売れなかったから、よければ好きに持って行ってくれと言われ、その場にいた数人でいくつかずつをもらうことにした。
とはいえ、流れでもらっただけのぬいぐるみなど、誰も特には気にかけない。大切に扱うこともない。
俺はとりあえず、もらったぬいぐるみを総てタンスの上に置いた。気に入ってるとかではないが、しまうことすら面倒で放置したのだ。
だけど俺の扱いはかなり極上のレベルだった。
他の連中に聞いたら、かざるのも面倒なので捨てたとか、飼い犬におもちゃとして与えたとか、酷くなると、憂さ晴らしに手足をもぐとか針を刺すとか切り刻むなんて言う奴までいた。
それを聞いて、俺の扱いは相当マシなんだと思った。
…それから数か月。
ぬいぐるみをくれた友達が行方不明になった。
親は警察に捜索願を出したが、一向に行方は知れない。
そんな友人を皆で心配していたら、案じる顔触れが次々不幸に見舞われた。
病気、交通事故、通り魔の犯行に精神を病んでの自殺。
理由は人それぞれだが、全員が全員この世を去った。去ると同時に、そいつらの手に渡ったぬいぐるみもどこかへ消えたことを、立て続いた葬式の席で知った。
あの日、ぬいぐるみを手にした面々はもういない。残っているのは俺一人。
友人達の不幸の後、俺は陳列用の棚を買い、もらったぬいぐるみを一つ残らずそこに並べた。
家に誰かが来ると必ず、どうしてこんな名もないぬいぐるみを飾っているのかと不思議がる。その疑問に俺はいつも、『気に入っているから』の一言だけを返している…。
ぬいぐるみ…完
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