3 罪人の町

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 腹を押さえ、血だまりを広げながら少女は膝を抱えるように丸まった。 あえぎも小さくなり、声はか細く、注意していなければ聞き取れないほどである。  それでも人々は、二人に視線すら向けずに行き交うばかり。 「……嫌」  少年は、わずかな言葉さえ聞き洩(も)らさなかった。 「それが現実だ。今、そこで、無様に地面に転がっているあんたが現実なんだよ」 「痛い」少女の目から涙があふれ出す。「見たくない……」  ぎゅっと目を瞑った少女にかがみ込み、少年は彼女の肩をつかんでその身体を起こした。 うめき、鼻水を垂らして血を吐きながら少女は「痛い、痛い」と泣き喚(わめ)く。 その間も血は白いワンピースに赤い染みを広げ、流れ続けることを止めない。  少年の両手が、少女の両肩をつかんだ。 覗き込むようにして話しかけられているのを知りながら、少女はますます顔をうつむける。 「目を開けろよ」  見ないことは赦(ゆる)されない。 「そんなことしたってあんたは何も変わらない」  留まり続けることは赦されない。 「この世界は腐敗の大地、誰もが穢れている場所だ。屑(くず)しかいない場所だぜ」  少年の言葉から逃げたくとも、もはや少女に動く体力も気力もなかった。 脈打つ痛みが身体を支配し、思考も支配している。 肌に触れる空気すら、今の少女には棘のように痛かった。 命が脈動と共に流れ出ていく。 朦朧(もうろう)とする意識の中で、少女は少年が慎重に息を吸い込む音を聞いた。 「穢れは消せる」
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