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空の上で、傍観者はその一部始終を眺めていた。
鳥籠から腐敗の大地へ墜落した少女は、運よく大地で協力者を見つけたらしい。
特に何の感慨もなかった。そういう者は大勢いる。
少年が墜落者を斬りつけた時はさすがに、片眉をあげてしまった。
人に対して突然攻撃を加える人間は、滅多にいない。
暴力を好む人間も、確かに腐敗の大地にいることはいるのだが。
少女が崖を登り始めるのを見て、傍観者の口元に微かな笑みが浮かんだ。
少女はこの先、何度落ちて何度諦めることだろう。
墜落者は禁忌を犯した者だ。
そう簡単に空へ来ることなどできやしない。
だが、鳥籠の外へ出られたということは、空に手が届くチャンスをつかんだということでもある。
あの少年は、少女をどこまで支え続けるだろうか。
腐敗の大地にいる人間だが、空にいてもおかしくはなさそうな人間だ。
清廉で穏やかで柔らかな光に満ち溢れるこの空は、選ばれた人間しか存在を赦されない。
だが空を目指すことは、腐敗の大地の人間にも等しく与えられた自由だった。
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