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風が傍観者の髪を撫でていく。
柔らかな光が降り注ぐこの場所――空では、どんな苦しみも不幸も存在しない。
すべてが幸福の中にあり、人々はそこで安らぎを得る。
足元の遥か下、眼下には腐敗の大地が見える。
空には居られない人々、すなわち罪人どもが堕とされた場所だ。
傍観者はほんの少し目を細めるように顔をしかめた。
姿を確かめることはできないが、数えるのも嫌になるほどの人間がいるはずだ。
視界の隅で影が動く。瞳を動かせば、また一人空から誰かが堕ちていくところだった。
ぎしり、と足元から鈍い金属音が響く。
視線を移し、意識して初めてその姿を見とめる。
まるで存在感の無い、空から吊り下がる無数の鳥籠。
軋む鎖でつながれた鳥籠の中に閉じ込められるのは、忌むべき人間たちだ。
空に昇ることも腐敗の大地に堕ちることも赦されない者たち。
身のほど知らずという罪はどれほどの苦しみだろうか。
考えようとしたところで、傍観者は思考を止めた。
考えたところで結局は無意味なことだ。
光の空と、綿の雲。
その遥か下、無限に広がるは腐敗の大地。
空から吊られた鳥籠は、罪人を閉じ込める牢獄だった。
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