監視

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数日後……。 「よぉ、流星」 この前話したコラボ商品の件で、『和菓子屋肥前』の7代目店主である、肥前誠人からあんこを少量、店先で受け取った。まだ試作段階なのでもらう量は少しだけ。 「ありがとうございます。うちの生地でこのあんこを包んで焼き上げたら、そちらの店にも提供するので……」 「ははっ、そんなに固くならなくていいっての。もっと気軽に話してくれよ」 肥前さんは、俺のアニキと同い年の21歳。なので丁寧に話しているが……向こうはそれが嫌らしい……。ちなみに21歳の若さなのに、結婚している。子供はまだ居ないみたいだが。 「そちらさんのクロワッサン生地で包んだあんパン……美味ぇだろうなぁ」 「いえいえ……そちらの手作りのあんこ、大事に包ませてもらいますね」 「あぁ、頼んだぜ。あんこはなぁ、出来立てはマジで熱いんだぜ? 今でこそ慣れはしたがよ、和菓子を作り始めた頃は毎日火傷しまくりでよぉ……それはそれは……」 肥前さんの愚痴(?)に耳を傾けようとしたとき、店内から女性が顔を覗かせた。 「誠人、無駄話はその辺にしてお店へ戻りましょう」 肥前さんが愚痴を熱く語ろうとした時、肥前さんのお嫁さんと思わしき人物が肥前さんの話を遮断するように言葉を重ねてきた。彼女の名前は肥前レコさん。旧姓は斎藤。ドイツと日本のハーフで、ドイツにいた頃は、レコ=レトヴィザンという名前だったらしい。 どことなく……雰囲気が蛍に似ていた……。
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