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和菓子屋肥前をあとにした俺は、手渡されたあんこを保管しておくために、カフェ一撃必殺へ。今日は珍しくバイトは入っていないので、ボスに挨拶だけして帰ることにする。
「おつかれさまです、ボス」
「おぉ、流星じゃねぇか。お前さん、今日バイト無かったんじゃねぇのか?」
平日のこの時間帯はあまり客が来ない。なのでこんな風に気軽に話も出来る。……っと、紹介が遅れたな。カフェ一撃必殺のボス、名前は儀ヶ沢願次郎(ぎがさわがんじろう)。彼の作るミルクティーに惚れてしまった俺は、今ではここで働く身になっている。
「さっき丁度、和菓子屋肥前の店主からコラボ商品に使うあんこをもらいまして……」
「はっ、あの若僧の店か」
ボスはその和菓子屋をあまりよく思ってないらしく、鼻で笑って見せた。和菓子屋の方は何とも思ってないんだが、ボスが凄くライバル視していて……もうなんていうか、目の敵にしているのだ。
仲良くやればいいのによ。
「あんこ、冷蔵庫にしまっておきますね」
「おう、休みの時にわざわざ来てもらってすまねぇな。帰ってゆっくり休むんだぞ」
「はい、それでは失礼します、ボス」
そう言って俺はカフェ一撃必殺にあんこを保管した後、店先をあとにした。ゆっくり休むっていってもなぁ……家に蛍が居るからあんまりゆっくりは休めない。
この前の一件以来、蛍は手当たり次第に等しいくらい恋人を勧めてくる。すれ違った人や、買い物のレジを担当した人。俺にだって選ぶ権利はあるし、そんな簡単に恋人なんて出来ねぇっての。
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