雨宿り

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 次の朝、私はいつもの時間に起床し、真っ先にコーヒーを淹れ、コーヒーが入る間に、食パンにバターを塗って、トースターに放り込んだ。簡単な朝食をテーブルに運び、椅子に座ったとたんに私は飛び上がった。尻を触ると濡れている。 椅子の上がびしょびしょに濡れていたのだ。こんなところに水をこぼしたっけ? 私は濡れた下着とズボンをはきかえて、椅子を乾いたタオルで拭いた。その時までは、そんな些細な出来事は全く気にしなかったのだ。 ところが、私の生活の違和感を決定付ける言葉を同僚から聞くことになる。 「おい、お前、いつの間に彼女作ったんだよ、この~裏切り者~!」 同僚が朝、私の顔を見るなり、ニヤニヤしながら肩を揉んで来たのだ。 「彼女?なんのことだ?」 「まったまたぁ、惚けちゃって!俺見たんだよ、昨日。お前がさぁ、女の子と相合傘で帰ってるところー。ちくしょう、羨ましいな。あのあとどこ行ったんだよぉ。」 「昨日は、ずっと一人だった。一人で、定食食って、一人でアパートに帰ったけど?」 「あくまで惚ける気だなぁ?わかったよ。今度ちゃんと紹介しろよな。」 同僚は私の肩を、ぽんと叩いて自分のデスクについた。  昨日の定食屋と言い、今朝の椅子のことと言い、何かが変だ。 傘、相合傘?さっぱりわけがわからない。  その日の夜、眠りについてすぐに、部屋に違和感を感じて目が覚めた。 目が暗闇に慣れると、私の足元に青白い女が立っていた。幽霊?私は怯えた。 しかし、マジマジと見ると、足がある。私は勇気を出して、聞いてみた。  「だ、誰だ!」 女からは水が滴っていた。髪の毛、ワンピース、細い腕、真っ白な顔。全身ずぶぬれだった。 私はもう一度、勇気を振り絞った。 「いったい誰なんだ。ずぶ濡れじゃないか。どこから入ってきたんだ!」 「私はアマヤドリ。昨日からずっとここに居る。」 女はそう言った。アマヤドリ?それは名前なのか?わけがわからない。私は昨日は一人だった。 そして女は虚ろな目で、私を見た。 「どうして、私がずぶ濡れかわかる?」 私にそう聞いてきた。 「し、知るもんか、そんなこと。警察呼ぶぞ?出て行けよ!」 私は女を威嚇した。すると、私の布団にいつの間にか女がするりと入ってきた。 私は、心臓が止まりそうなほど驚いて、女のような悲鳴をあげた。女の体はずぶ濡れで 氷のように冷たかった。
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