第1章

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「いい?ちゃんと周りを見ながら何もせずに家に帰る事。分かった?」  もう毎日のようにしている、帰る前の正門前でのやり取り。真紀は夢香に人差し指を立てて言う。 「はいはーい。寄り道せずに帰りまーす。」 「……本当だよね。」 「ほんとだよー。」  そんなに私は信用が無いのか。夢香が落ち込む。 「あ、ごめん。私が悪かったから泣かないでよ!?」 「え、もしかして顔に出てた。」 「うん、出ていたよ。」  恥ずかしそうに顔を赤らめ、仕返しに、 「このお母さんめ。」  と、彼女が嫌うセリフを吐く。 「違うから!」 「お母さん、まだ帰んなくて大丈夫なの?」 「あ、そうだ買い出し行かなきゃ。ゆめちゃん、またね。」 「また明日ね―。」  真紀がかえるのを見送り、夢香も駅に向かい歩き出す。  マンションを通り過ぎた後、どこかから声が聞こえた。 「もうそろそろかぁ。」
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