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周りには夢香以外は誰もいない。先ほどの声は、公園の周りの植木から聞こえたらしい。
「誰だろう。」
きょろきょろと見回すが誰もいない。真紀に言われたことも忘れ、声の主を探し始めた。
「そろそろ帰ってもいいかな。でも、見届けないとダメって言われたしな。」
声の主は、誰かに命令されてきたらしい。おまけに早く帰ってだらだらと過ごしたい、寝て一日が過ぎればいい。そう思う夢香の同類のにおいがする。
「あれかな。」
植木をよく見ると、中に桃色の髪と羽、黄色の布で身体を覆うおそらく妖精と呼ばれるであろう風貌をする3センチほどの大きさの生き物が浮いていた。
「あのー。」
夢香が声をかけると、首を動かし、固まった。目が合い数秒後、顔が赤く染まってきた。
「わー!人がいるよー、見つかってるよー、僕どうしたらいいのー。」
「うわー!しゃべったー!」
焦る二人。はたから見ると木に話しかけている女の子が居るのだから、怖くて近寄りたくないだろう。先ほど、ここを通るはずだった生徒は、彼女を見たとたんに引き返して行った。困惑したような顔であった。
そんなこと知らない二人は、落ち着き見つめあっていた。
「あなたは、妖精さんですか。」
「過去からやってきた人間です。」
見た目妖精の彼は人間らしい。羽の生えている人間は見たことも聞いたこともないが、人間らしい。本人が言うならそうなのであろう。
「過去の人が未来に来たのですか。」
「その通りです。」
「今から何をするのですか。」
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