美春君、風呂へいく

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掻きすぎたか。 指の腹で血を拭うとジンジンと地味に痛痒い。 相川がこっちを盗み見る気配がしたので、すかさず目を合わせると驚いたのか少しだけ体が揺れた。 気まずそうにしているのが可哀想になってきたのと少し引き留めたい気持ちもあって話を振ることにした。 「去年、芹沢と同じクラスだったんだけど……お前、あいつと仲良いよな」 「……ああ、うん」 「中学一緒だったとか?」 これはわりと本気で疑問に思っていたことだった。 人懐こいくせに一匹狼で、授業はさぼるのに定期テストでは常に上位層にいて、癒し系って感じの容姿をしていながら女遊びが激しくて、口を開けば下世話なことしか言わない。 とにかく掴み所がない。 あまり絡んだことはないが、少なくとも俺の中で芹沢はそんな印象だ。 正直、芹沢と相川が普段どんな会話をしているのか想像がつかない。
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