甘い香りに誘われて

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特にいつもと変わった様子はな………… いや、よく見ると、シャツのボタンは掛け違えているし、心なしかぼんやりとしている。 時々椅子やら荷物に躓いたり誰かにぶつかったりしながらふらふらと自分の席に戻っていく。 確かに様子がおかしい。 「よっくん、また市野の手伝いなの?」 「ん?あ、うん」 「なんか春休み中も手伝いやらされてたって話聞いたんだけど……市野に気に入られてんだねえ……」 「別にそういうわけじゃないけど……」 確かに春休み中にも“手伝い“ということで数回司書室に行っていた。 実際のところ、血をもらうのが目的だったりするが、こき使われることもあった。 よく血をもらうから、そのお礼の意味もあっていつも手伝いを引き受けてる。 市野の血は俺の好みの味に近いんだ。 「もしかして付き合ってるとか?」 「は?……なわけないだろ」 ……どうしてそうなる。 山本の突飛な考えには呆れてしまう。 「だってさー、市野って贔屓とかあんましないタイプじゃん。よっくんだけなんか違うのかなって、なんか特別?みたいな」
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