・一話

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「お前にがっかりされるのはむしろ嬉しいくらいだが……」 「そっちが振ってきた話題でこうなったんだからその言い草はないだろう」 「ふっ」  俺と槍神を敵に回したことを悟った岸本は薄く笑った。 「あ、急用を思い出した!」  そしてものすごい勢いで教室から逃げていった。  奴の逃げ足の早さは俺も毎回、感心するほどだ。なぜか逃げるのに偉そうだし。 「岸本はそのうちけしからん犯罪にでも走らないといいのだが……」 「でも確かあいつの父親って県警のお偉いさんだろ?」 「そうだったな……そんな家庭環境でどうしてあんな変態が……ん?」  槍神の視線があらぬ方向を向く。  その視線の先に、小柄な少女、斉藤篠がいた。  小さい。とにかくちっちゃい。  俺が彼女に抱いた印象はそれだ。  制服を着ていなければ確実に小学生に間違えると思う。  ランドセルでも背負ってたら百人中、百五十人くらいは小学生だと思うだろう  それくらい小柄だ。  まだ4月初め、このクラスになってから数日しかたっていない。  当然、俺は彼女とまだ話したこともなかった。 「……何か用か、篠?」  槍神が近づいてきた篠に声をかける。その口調は知己に対するものだ。  この二人に何か接点があるのだろうか? まあ聞いてみればいいのだが。 「知り合いなのか?」 「ああ、篠とは親戚だ」 「なんだと」  槍神。でっかい。とにかくでかい。  篠。ちっちゃい。とにかくちっちゃい。  親戚以前に同じ種の生物かどうかも怪しいほど大きさに違いがないだろうか? 「かなり遠い親戚だが……はとこか、はとこの子か、それくらいの」  はとこは従兄弟の子同士だったろうか?  それなら血縁があり、遺伝子のいくらかは共有してることになるわけだが。 「遺伝子仕事しろよ……」  俺は思わず呟く。  「このギガントピテクスの親戚とはとても思えん……」 「誰がギガントピテクスだ。人を勝手に絶滅した史上最大の霊長類にするな」 「……ちょっと」  放っておかれた篠が口を挟む。 「おおすまん、何か用だったか?」  槍神が篠に向き直った。  しかしこうして並んでみると、本当に大きさが違いすぎるな……。 「いえ、用があるのはそっち」  篠は俺を指差す。 「俺か?」 「そう、話があるわ。後で校舎裏まで来てくれない?」 「校舎裏……?」
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