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「わたくし、実家に帰らせていただきたいと思います」
只今、とっても不本意ながらウェイデルンセン王国のお城でほぼ居候の身であるヨシュアは、駆けつけ、いきなりで世話になっている王様にこう切り出した。
「本気か?」
「もちろんです」
宣言されたファウスト王は、バカを言うなと一蹴して終わらせたかったが、周囲の目を気にして躊躇ってしまう。
ヨシュアは人目をはばからず、城内で往来が多い通路を選んで直訴していた。
辺りには成り行きを見守っている気配がひしひしと感じられる。
ファウストにとっては可愛い可愛い妹の、全く気に入らない憎たらしい婚約者と称するしかないヨシュアだが、外面宜しく過ごしているので城内の評判は日々国民の為に頭を悩ませている王様よりもかなり高い。
人前でへたな態度で接すれば、ファウストが悪く見られるだけでなく、巡り巡って妻や娘にまで非難される可能性が出てくる。
と、ここまでを瞬時に計算した王は、とりあえず場所を移す事にした。
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