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「それで。どうして、今更、実家に帰りたいなどと言い出した」
ファウストは妻のエヴァンも遠慮するプライベートな書斎に連れ込み、ソファーに座って話の続きを促した。
「先日、私に荷物が届いたのはご存知ですよね」
「確か、お前の兄、ミカル殿からだったな。それがどうした」
「だからです」
さも当たり前のように言い切られても、ファウストには、ちんぷんかんぷんだ。
「そんなのでわかるか。最初から順を追って説明しろ」
「どうしてわからないのかが、わかりません。荷物の中身を覚えていないのですか」
ヨシュアに関する郵便物を本人に渡す前に全て検閲しているのは、お互いに承知しているところだ。
「いつもの問題集だったではないか」
スメラギ家から毎月お小遣いを支給されているヨシュアは、代価として課題の提出を義務付けられている。
「違うといえば、いつもより量が多かったくらいだろう」
「そう、それです! すっかり忘れてましたが、もうすぐ定期試験の時期なんです。受けなければ落第してしまいます」
「ああ、ヨシュアはまだ学生だったな。これを機会に、いっそのこと退学したらどうだ」
「ありえない。そんな事、考えられるわけがないでしょう! 俺が、共学の苦痛にどれだけ耐えたと思ってるんですか。それもこれも、全ては卒業証書を受け取る為なんですよ!」
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