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思っていたよりあっさりと許可をもらえたのでヨシュアは拍子抜けするが、ファウストの気が変わらない内に予定を立ててしまおうと切り替える。
そそくさと自室に戻るつもりで挨拶すると、王に引き止められた。
「言っておくが、各方面への報告は自分でしろよ」
「わかりました」
返事をしてみたものの、最後の言いつけには首を捻りながら書斎を後にした。
「報告ったって、シモンには相談してあるし、他は……」
口に出して考えて、誰の事か思い当たった。
婚約者であるティアラの存在に。
婚約者と言っても、背後に利益ありきの契約関係で、当人同士はお互いに全くその気がないという繋がりだ。
何より、ヨシュアは大の女嫌いだった。
それでも、この頑なで歪んだ性格をどうにかしたいと考えているので、リハビリ気分で婚約を続行しているにすぎない。
とまあ、それはあくまでヨシュアの言い分で、実際には国家機密である狼の守護神・カミの存在を知ってしまったが故に強制的に婚約者として縛られているだけの話だった。
「方面ってことは、カミも含まれてるんだろうな」
ヨシュアは見上げるほど大きな獣姿を思い出して、深ーくため息をついた。
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