第一章

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前者の大人な二人に比べて、二つ年下なだけのティアラは全く警戒しないでいられるわけではない。 それでも、二人でいる時の口調は自然と素になるし、喋っているのも苦痛ではなくなっている。 ただし、ヨシュアが望む適度な距離をティアラが律儀に保っているからであり、その感覚が少しでもヨシュア側に近寄れば、即座に鉄壁を築く用意がある不安定な関係だ。 そんな、もどかしい二人を応援しているレスターは、王族専用棟に面会用の一室を整えてやっていた。 ファウスト王の耳を除外し、仕える者は全員レスター直属の男性のみで揃えている。 「良かった、上手く会えたみたいだね」 部屋に入ると、王の側近で、現在はヨシュアの世話を担当してくれているシモンが出迎えてくれた。 「ティアラには何も言ってないから、最初から説明してあげてよ」 親しい人間には旺盛なサービス精神で隠し事のできないシモンだが、最近はヨシュアから直接ティアラに話をさせようと頑張って黙っている努力をしている。 「いいけど、大した話じゃないからな」 ヨシュアは前置きをした上で、学校の試験を受けにシンドリーに戻る為、一時、暇をもらうのだと簡単に伝えた。
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