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海に入るため、鈴音が羽織っていたパーカーを脱ごうとすると、
「着たままの方がいいな。日に焼けそうだ」
春一に止められた。
一応日焼け止めは塗ったが、真夏の太陽に容赦などない。
傍らにビーナスもかくやという、きめ細やかな肌をした夏樹がいるなら尚更だ。
素直に春一の忠告に従うことにし、脱ぎ掛けたパーカーを羽織り直す。
それにしても……、
ビーチを照らす太陽の光を恨めし気に見やっていると、そこに、
「ほい」
頭から大きな浮き輪をかぶせられた。
夏樹だ。
「これ持ってついて来てくれ。鈴音は俺たちの救命ブイだからな」
それからイヤミったらしくニヤリと笑い、
「浮き輪なんか無くても、十分浮いてそーだけど」
と言い放つ。
「し、失礼ねっ!」
思わず怒鳴り返す鈴音をからかいながら、夏樹も海へと駆け出して行った。
ふと振り返って春一を見れば、春一は穏やかに笑って手を振っている。
「鈴音、遅ぇぞ」
夏樹に誘われ、鈴音も体を戻して後を追いかける。
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