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塩辛い水が口の中に飛び込んできた。
慌てたせいか鼻の中にまで海水が入ってツーンと痺れるように痛い。
「ゴボッ」
咳き込んだ瞬間、水を思い切り飲んでしまう。
泳げないわけではないが、こんなに深い場所は初めてだ。
まったく水底を感じられない恐怖に、つい体がすくむ。
『春さん!』
ギュッと目を閉じた瞬間、ガバリと海面から顔が出された。
「ゲホッゲホッ」
激しくむせながらも、腰を抱いて助けてくれた主の首に腕を回せば、
「んだよ、何もねーのにいきなり溺れてんな!」
鈴音を持ち上げてくれたのは夏樹だった。
鈴音に首をしがみつかせたまま立ち泳ぎしている。
「……夏樹」
涙目を開けて夏樹を見下ろせば、濡れ髪のイケメンは困ったように眉をしかめる。
「そんな目で俺を見るんじゃねーよ」
ふいと視線を逸らせた。
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