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岸に向かってゆっくりと平泳ぎしながら、夏樹は鈴音に問う。
「良かったのか?」
「なにが?」
つい尖ったような声が出てしまったのは、別に夏樹のせいじゃない。
他の女の子にあんな顔をしていた春一のせいだ。
それから、自分の狭量さが情けない。
もう海水が染みるのはどこかに行ってしまったが、鈴音の目からは涙が止まらない。
みっともない嫉妬と、自分のコンプレックスをまざまざと実感してしまった。
こんなことはイケメン彼氏を持つ限り、何度だってあることだろう。
そのたびに鈴音は、こんな醜い感情に身を焼くことになるのだろうか。
他の女の子を見る春一の視線が悔しくて憎らしくて、同時にそんなことを思う自分が嫌いになる。
泣きたいくらい、大嫌いになる。
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