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やっと足がつくところまで泳ぎ着いて、鈴音はようやく息をすることが出来た。
あわてて顔をこすって、泣いていたことを無かったことにする。
あれは溺れて苦しかったせい、もう足がつくのだから大丈夫。
自分に言い聞かせながら足を前に出すが、一歩進むたびに足首まで潜る砂地は驚く程歩きにくい。
つい足元がよろけてしまった。
とっさに、夏樹が腕を伸ばして支えてくれようとしたが、
「いい、大丈夫」
鈴音は夏樹の手を振り払っていた。
「――あ」
はっと我に振り返ったら、やはり夏樹は、ちょっと傷ついた顔で鈴音を見ている。
せっかく助けてくれようとしたのに、こんな失礼な態度はないと、
「……ごめん」
鈴音は小さな声で謝る。
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