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なんとか水が膝の位置まで歩くが、今度は海からあがった自分の体がびっくりほど重い。
波に八つ当たりするように乱暴に水を蹴っていると、
「なあ」
夏樹が後ろから声をかけてきた。
振り返る間もないと、
「――なに」
鈴音が前を向いたまま返事をすれば、
「俺の方が気楽だぜ」
夏樹がふいに言った。
「――え?」
「俺の方がなんでも言えるだろーし」
一瞬、何を言われたのかわからず振り返れば、
――ボン!――
夏樹の横っ面に浮き輪が激突したところだった。
「うわっ!」
予期せぬ攻撃を食らって夏樹は水の中にひっくり返る。
浮き輪を投げた主はもちろん、
「……春さん」
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