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「じゃあ、俺の荷物お願いできるかな」
鈴音に差し出されたのは、タオル1枚しか入っていなさそうな小さなビニール製のバックがひとつ。
さすがにこれだけじゃと思っていると、
「これも頼むわ」
脇から夏樹がトートバッグを差し出してきた。
これで一応両手がふさがった態にはなるが、いかんせん他の兄弟たちの荷物に比べれば軽い。
いいのかしらと戸惑う鈴音に、
「鈴ちゃん、転ばないよう僕と手をつなごう」
冬依がニッコリ笑って右手を差し出してきた。
その態度があまりにも自然だったので、
「あ、うん」
鈴音はつい手をつないでしまってから、果たして誰の転ぶ心配をしたのやらと、ちょっと問うてみたくなった。
でも当の冬依があまりにもニコニコと笑っているので、つい言葉を飲みこんでしまう。
こんな美少女然とした冬依に他意があるなんて、とても思えない。
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