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春一にいざなわれてパラソルの下までくれば、夏樹が鈴音を見るなり、
「おー可愛い可愛い」
拍手をくれた。
しかし、
「夏樹に言われても何でだろ、ちっとも嬉しくない」
鈴音は頬を引きつらせる。
この来生家1のフェロモンの持ち主、夏樹がビーチチェアに横たわれば、そこは何故か王宮もかくやというムードを醸し出す。
夏樹の方が鈴音よりよっぽど美人だから、可愛いなんて言われても素直に受け止められるわけがない。
鈴音はまるで王族から言葉を下賜された旅芸人の気分になっていた。
「んだよ、めずらしく褒めてやったんだから素直に聞いとけってーの」
夏樹は唇を尖らせながら起き上がる。
「さてと、目覚ましにひと泳ぎしてくるか」
グンと伸びをする肢体も美しく、傍らに年頃の女性がいるというのに、何故か色っぽさは夏樹の方が上という不条理さ。
鈴音はこんな美人を創った神様に、ちょっと文句を言ってやりたくなった。
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