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「どうしたら、あの化け物は……」
小さな声でメグが聞くと、扉を叩く音がさらに激しくなった。
耳障りな音に耳を塞ぎたくなるが、アキミの言葉を聞き逃す訳にはいかない。
必死にスマホを耳に押し付け、雑音を消そうとする。
アキミも気付いたのか、声を少し大きくして話し出した。
『化け物が出てきた水鏡を閉じたら、化け物も消えるよ。水鏡の閉じ方は……』
そう言って教えてくれたのが、以下の方法だ。
1、水の張った浴槽を3回かき混ぜ、その中に塩を入れる。
2、渦の巻いている水面の中心を10秒見つめる。
3、10秒見つめてから目を閉じ、3秒声に出して数える。
たったそれだけ。
『メグ、いい?声に出して3秒数える間、目を開けちゃダメよ。朝が来てもダメ。開けたら扉が閉じれなくなる』
メグは黙って頷くが、それは電話の向こうにいるアキミに伝わるはずがない。
喋られない環境にいる事を理解しているアキミも、それ以上は何も言わなかった。
外へ出られない以上、アキミの言葉を信じてやるしかない。
通話を終えたメグはスマホを握りしめ、涙目を擦った。
シズクの事を調べている暇はない。
今はただ、水鏡の扉を閉じるしかなかった。
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