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アキミは扉を閉じる事を、『水鏡の儀式』と言った。
何故アキミはその事を知っているのか、メグは知らないし知りたくもなかった。
オカルト掲示板から拾ってきた知識なのだろうと考えながら、今はこの状況を打破する事だけを考える。
押し入れに隠れたのは良いが、化け物は未だに扉を叩いている。
大きく呻きながらやめる様子も無く、ただひたすらにメグを襲おうと叩き続けていた。
奴の目的は、メグの身体。
アキミの話によると、この世界に未練を残した化け物が未練を果たす為身体を求めているのだという。
今出たら、メグの身体を乗っ取られるのが目に見えてる。
しかし水鏡の儀式を行うためには、台所で塩を手に入れて風呂場に行かないといけない。
メグは押し入れの中を、手探りで探してみた。
だけどあんな化け物に効きそうな物なんて、何も思いつかない。
ふと握っているスマホに目をやる。
スマホのライトなら、何とかなるかもしれない。
右手に握りしめたスマホに、左手は扉に手をかけて。
そして、勢いよく開けた。
目の前に立っていたのは、赤い目に黒い長髪。
口端をつり上げ、不気味に笑う女性の姿だった。
長い前髪から覗かせる赤い目が、人間に見えない。
大声をあげて叫びたい気持ちを抑え、メグはスマホの画面を化け物に向けた。
化け物は少し止まってから、頭を抱えて呻き声をあげる。
「今のうち……!!」
そう言って飛び出そうとしたが、突然腕を掴まれ床に倒された。
だが腕は掴まれたままで、メリメリと爪が食い込んでくる。
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