水鏡の儀式

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「あぁっ……!!」 気持ち悪い、眩暈がする。 吐き気も、頭痛も、何もかもが襲い掛かって。 頭の中に浮かんだ1人の少女の姿に、メグは頭をあげた。 「そうだ、この姿……」 ずっと消えていた、その姿。 黒くて長い髪に、赤いリボンがトレードマーク。 痛む手なんて関係無しに、ポケットからスマホを取り出す。 スマホの待ち受けにある画像。 メグとアキミの間に、不自然に空いた空間。 今ならそこに『誰がいたのか』、見える気がした。 「シズク……」 メグは思い出した。 この写真は、3人で撮った記念写真。 そこにはアキミの他に、シズクもいた。 アキミが覚えてないのは不可解だったが、それでもシズクという人は存在した。 それを思い出しただけでも、メグの心はどこか満たされた気がする。 突然扉を叩く音に、我に返ったメグ。 そうだ、今はこんな事している場合じゃない。 再びかき回して、水面の中心を見つめる。 心の中で数え始め、扉を叩く音をなるべく聞かないように耳を塞いだ。 5……6……7…… 「アケロォォォォォ!!!!」 化け物は叫び始める。 だけと聞かないふり、聞こえないふり。 今は、儀式に集中しないといけない。 ……10秒経った。 メグが数え終わった瞬間、化け物は扉を開けてきた。 開けたというより、叩き壊したという方が正解だが。 それでも、風呂場への侵入を許してしまう。
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