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だけどメグは、一切動じなかった。
あとは3秒数えれば、全てが終わる。
スマホを握りしめ、目を閉じた。
その瞬間に、化け物の手がメグの手に伸びる。
絞められた首に、化け物の爪がめり込む。
メグは痛みのあまり逃れようと暴れると、濡れた床に思わず足を滑らせた。
「あっ……!!」
勢いあまって、そのまま化け物と共に浴槽の中へと落ちてしまう。
底が無い。
メグの身体は、浴槽の底につくこと無く下へ下へ落ちていく。
周りが暗闇から、まるで絵具を混ぜた水の様に濁った色へと変色していった。
ここが、忌世界?
まだ首に、化け物の手が食い込む。
息もできず首も締まり、メグの意識がどんどん遠退いて行く。
『メグ……』
突然の声に、メグは意識を取り戻す。
ガボッと息を吐きだすが、既に苦しさは消えていた。
首を絞めていた化け物は、頭を抱えて苦しんでいる。
メグは落ちてきた場所を見上げると、1人の少女がゆっくりと落ちてきた。
思わず目を疑う。
メグは知っていた。
いや、思い出した。
赤いリボンがトレードマークの、失っていた親友。
「シズク……」
「ようやく声が届いた……」
「どうしてこんな所に?」
「水鏡の怪、私もやっちゃって失敗したんだ」
メグはあの事を言おうと思ったが、口を閉じてしまう。
誰もシズクの事を覚えてないなんて、言えるはずがなかった。
「メグ、急いでここから出て。今ならまだ閉じられる」
「でもシズクは……」
「私は既に肉体を奪われたからここから出られない。だけど身体があるメグなら、まだ帰られる」
シズクの目から、涙が流れていた。
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