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「メグ……メグ!!」
メグが目を覚ますと、風呂場で心配そうに見つめる両親の姿があった。
慌てて飛び起きたメグが腕を見ると、あの時握られてついた傷が無くなっている。
一瞬夢だったのかなと思ったが、右手に握られたスマホを見ると夢では無い事がすぐにわかった。
「貴方、こんな所で寝てたの?」
「お母さん……」
父親がメグを抱え、部屋まで運んでくれた。
ベッドに寝かされると、部屋に射し込む陽の光に思わず目を細める。
今は何時だろう?
そう思ってメグは時計を見ようと、スマホのディスプレイを見る。
スマホのディスプレイには、アキミとメグと今まで失われていたシズクが映し出されていた。
それを見たメグは、満面の笑みを浮かべてアキミに電話をかける。
数回のコールの後でたかと思えば、最初に飛んできたのはアキミの怒号の嵐だった。
だけど電話口のアキミは、泣いていた。
震える声を聞いてメグは、本気で心配してくれた事にお礼を言う。
そしてメグたちの中で、都市伝説の話はしないと2人は約束した。
「ねぇ、アキミ」
『な、なに?』
「私達、ずっと友達だよね?」
『そうだよ……アタシたち、ずっと友達だよ』
少し笑ってメグは、言葉を続けた。
「私達の他に、もう1人いなかった?」
『え?もう1人?いたっけ……?』
やはりアキミには、シズクの記憶はなかった。
だけどメグは、心にちゃんと刻んである。
消えた昔の友人と共に過ごした、笑顔の日々を。
「なんでもないよ!!」
メグはそう言って、涙を流す。
水鏡の向こうには、忌世界が広がっている。
身体を狙った化け物が、こちらの世界へやってくる。
化け物に囚われた人間は、忌世界に魂だけ囚われる。
だけど忌世界は、化け物ばかりじゃない。
メグが浴槽にためた水を眺めると、シズクの顔が見えた気がした。
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