水の鏡

7/10
前へ
/18ページ
次へ
それが腕だと理解する前に、頭を掴まれ浴槽の中に引き込まれる。 メグは持っていたスマホを地面に落とし、引きずられるがままに水の中へ身を落とされる。 必死にもがくが、もがく度に掴まれた部分が食い込んできて痛みが走った。 狭い浴槽なのに、なかなか水面上に上がれず苦しくなってくる。 思わず水中で目を開けると、そこにあったのは血に塗れた女性の顔だった。 口から一気に空気が漏れだし、メグは力を振り絞って浴槽から飛び出した。 息を整える暇も無く風呂場から飛び出し、2階にある自身の部屋に駆け込む。 乱暴に扉を開け、勢いよく閉めてクローゼットに滑り込んだ。 そこでようやく息を整え始め、暗い部屋を扉の隙間から見渡す。 左手にスマホが握られていない事に気付くと、メグの目からさらに涙が溢れ出してきた。 「お風呂に置いてきたんだ、携帯……」 もし取りに行ったとしても、水に濡れて使えなくなってるかもしれない。 だけどあれが無いと、恐ろしくて仕方がない。 ダンダンダンダン!!!! 「……っ!!」 誰かが、メグの部屋の扉を叩いてきている。 音で驚いたのではなく、誰に叩かれているのかに怯えているのだ。 思わずメグは頭を抱え、ガチガチと歯を鳴らす。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加