まだまだ暑い日が続きますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

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暑い。 何処にいても、蝉の声が纏わりつく。 身体中が汗でベタベタして、不快。 髪の毛が頬に貼り付いて、邪魔。 眼鏡の鼻あてが滲む汗のせいで、滑る。 眩しすぎる青空を見上げたら、眼鏡のレンズが曇った。 太陽は照り続ける。 地上でこの暑さに恨みごとを言う僕らを、見下しながら。 太陽は照りつける。 乾いたコンクリートを砂に変えようとでもいうのか。 僕はおもむろに、ホースの先を握った。 こいつも太陽の熱で、不自然にふにゃりと柔らかい。 構わずに蛇口を捻った。 ホースを掴む指先に水の流れる震動。 まず飛び出たのは、ホースの中で太陽によって温められたぬるい水。 乾いたコンクリートを濡らして、流れていく。 ホースの先を潰して勢いを増した冷たい水で、干上がったコンクリートに雨を降らせる。 空中で波打たせる。 地面に水の粒が跳ねる。 虹を作ることに成功した。 見とれて夢中になっていた。 通りがかりの自転車が僕を睨んだ。 車道にまで水は流れていった。 昔、じいちゃんに聞いた。 "こうして撒いた水が太陽の熱で温められ、やがて雲になり、雨を降らす" 家の前で水を撒いたくらいじゃ、雲はできないだろうけど。 昔の人は打ち水をすることで、水を撒いた所の気温を下げて涼しくさせていたとか。 放射冷却……とか、なんとか。 どうかな、涼しくなったかな。 蝉は相変わらず、耳鳴りがするほど鳴いている。 僕の作った虹の下に、水溜まりが出来ていた。 ホースを持ったまま、水溜まりの中の虹を見たくて近寄った。 僕が行けばホースも動く。虹は角度が変わって見えなくなった。 仕方ない。ホースは後ろ手に持って水溜まりを覗いた。 水溜まりの中に虹はなく、代わりに恐ろしい顔をした鬼が笑っていた。 水溜まりの中の空は真っ暗で、今にも雷が鳴りそうだ。 慌てて尻餅をつきながら水溜まりから視線を外す。 とたん、僕の頭に雷が落ちた。 僕の後ろで、僕の妻が怒り狂っていた。 後ろ手に持ったホースから溢れていた水が、彼女を濡らしていたらしい。 しかし、君は何故僕の頭をスリコギで殴るんだ。 僕の頭はカミナリ様の太鼓じゃないし、スリコギは太鼓を叩くバチじゃない。 そこに、打ち水の成果か、バケツをひっくり返したようなどしゃ降りが。
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