ついてない男

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人間負けが込むと、周りがまるきり見えなくなる。 婆さんの右足が小刻みに揺れる。 イライラしてる。 こうなると勝ちは逃げる。機械割の乱数に感情をはさむなんて馬鹿げてる。 バァーン!! 周りの人間を意に介さない神経の持ち主のようだ。 勝つのは時の運だが、負けないのは退き時だ。単価の低い勝負はずっと勝つのは難しいがずっと負けるのも難しい。必ず上がりの波が来る。元手が千円増えて即ヤメできるヤツはそうそう負けない。いい波が来る時は黙ってても大勝ちする。悪い波の時にいかに被害を最小限にとどめるか。 自分を抑える理性が必要だ。 バァーン!! 弾きとばされたコインが俺の足元に転がる。 気に入らないが拾ってやる。善意ではない。 案の定、婆さんは一瞥くれただけで「ありがとう」の一言もない。 負ける人間の典型的なパターンだ 婆さんのコインが切れた。婆さんはしばらく考えて台を棄てた 婆さんが他の台に移動したのを確認して、俺は婆さんの座っていた台に移動した。負けた人間の後に座る。俺の中の定石だ。 コインを3枚入れる。スタートボタンを叩く… トゥーン。プツン。 液晶が真っ暗になった。
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