驚かせるつもりはなくて、ただここにいたいだけだった。

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私は、死ねなかった。 私は、売られた。 私は、私を売った。 私は、私を金にした。 私は、私を……捨てた。 手渡された封筒。手渡された現金。手渡された私物。 男は、その全てを取り上げた。 男は、その取り上げた現金で私を買った。 男は、私を抱いた。 男は、私を殴った。 男は、私を…………どうしたかったのだろう。 ある日、売られたお店の店長に呼ばれた。 「その、あまりにもね……酷くてさ」 仕事はちゃんとやってた。 もちろん好きでやってた訳じゃない。 嫌でたまらなかった。 でも、私には何もなかったから。 「なにが、酷かったんです、か?」 今日の衣装、剥き出しの肩が寒い。 「君のね、体の傷や痣が……お客様がね、痛々しくてって帰り際に言うんだよ」 私の体の傷や痣は、習慣的に受けていたためか消えにくくなり、赤黒い斑点の模様が体の至る所にあった。 私は、仕事を失った。
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