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大好きなおばあちゃんの、大きな、大きな、家。
何も告げられず、連れられて行った、夏の終わり。
そこには、黒い服を着た、おじさん、おばさんたちが、いた。
そして、黒い服を着た、知らない人たちが、たくさん、たくさん、いた。
みんな、こわい顔をしていた。
お父さん、お母さんも、とってもこわい顔をしていて、まるで知らない人みたい。
私のことは、まるで見えてないかのように、何かいっぱい、話している。
私はとっても居心地が悪くて、縁側からそっと、裸足で庭に下りた。
行き先は、おばあちゃんの大好きな、大きな池。
おばあちゃんが手を叩くと、とっても大きくて綺麗な金魚が、綺麗な水から顔を覗かせていた、大きな池。
でも今は、濁っていて何も見えない。
池も、小さくなったような気がする。
それでも私は手を叩いてみた。
すると、濁った水の底で、何かが揺れたような気がした。
それはだんだん、近づいてきているようだった。
私は更に、水の中を覗き込もうとした。その時、
「──ちゃん」
大好きなおばあちゃんに呼ばれたような気がして、振り向いた。
でも、誰もいなくて。
気がついたら、おばあちゃんの大きな大きな家は、夕闇に紛れていた。
蜻蛉が飛んでいる。
私は何かに導かれるように、家に足を向けた。
でも本当に、戻って良かったの?
ねぇ、おばあちゃん……
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