そういえば、大抵の主人公はギルドに所属するよなー

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シュバルツも何食わぬ顔でギルドへと入る。慣れた足取りで混み合うギルド内を移動し、空いている受け付け席へと座った。 シュバルツが一日に受けられる依頼の件数は五つ。普段は体力と時間の関係で三つに抑えているのだが、サイサが居るので今回はささっと終わる為上限一杯である五件の依頼を受けた。 ギルドにはランクがあり、保持しているランクにより受けられる依頼の数と難易度が変わる。 一般的なギルド員はCランクに位置しているが、シュバルツのランクはBランク。Bランクは頑張れば誰でも取れるランクだが、Aランクからは魔法が使えなければ依頼を受ける事すら出来ない。 出来るだけ依頼場所が纏まっているものにしようと厳選していると、シュバルツはひとつ気になる依頼書を見付けた。 『狂暴化した精霊の討伐依頼。特徴は黒い髪に黒い瞳、性別男、14歳程の見た目で普段は人間に擬態している可能性大。理性のある精霊の為、発見は困難を極めると思われる。既に死亡者が二桁を越え、至急討伐を求む』 「この依頼……」 「あー、その依頼は気にしなくて大丈夫です。数年前に国から発行された無期限の依頼なんですけど、元々Sランク依頼だったものですし」 「Sランク?なんでそんなものが?」 「対象が一向に見つからないという事で、兎に角目撃情報を集める方針に国が変えたんですよ」 「ふーん、そっか」 バクバクと心臓が早鐘を打っているのを悟られないように、シュバルツは必死に無反応を努めた。頭の隅でちらつくサイサの顔を無視して、シュバルツは依頼書を手に席を立つ。 精霊にもランクが付けられている。全般的な特徴としては、浮かべて、消える事が出来る。 最低ランクの精霊は形が無く、光の玉のような形をしている。反対に、最高ランクの精霊は人の形を取るという。中間には動物の形が入る。 シュバルツはギルドを出る間際に視線を感じて振り返った。 ギルド二階、吹き抜けから視線が合った人物が誰なのかを認識して、シュバルツは素早くギルドを出た。 ギルドからある程度離れて、シュバルツは駆け出す。 兎に角ギルドから、正確には目が合った人物、ギルドマスターから逸早く離れたかったのだ。 「ハァ――ハァ――ハァ――、なんだこれ、嫌な予感がする!」 街の外に出て、周りに誰も居ない事を確認してからシュバルツは喉の奥で掠れた呼吸をしながらそう言った。
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