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「そいや!」
猪の魔物を手刀で貫き、絶命させるサイサ。ずるっ、と抜ける腕は血に濡れているが、しばらくすると綺麗さっぱり消えてなくなった。
「シュー、こっち終わったどー」
暢気な声を掛けた先ではシュバルツと、サイサが先ほど腕で貫いた魔物の仲間が死闘を繰り広げている。
シュバルツの剣は魔物の厚い皮に遮られ、切る事叶わず表面を滑るのみに終わっている。シュバルツが相手取っている魔物は三匹、元々八匹程居たが、その殆んどはサイサによって葬り去られた。
代わる代わる突進をする魔物の攻撃を踊るようにして回避し、それと同時に切りつけては無駄に終わる。一目でじり貧だと分かった。
サイサの声に反応したのか、それとも仲間を殺されて激怒したのか、シュバルツに群がる魔物の一匹がサイサに向かって突進するが、足元の土が隆起し、足を引っ掛けて無様に転がる魔物。
丁度良くサイサの目前で停止して止めを刺された。
「ふぅ。おーいシュー!シュー?シューシューシュー」
「うっさいッ!!」
「しょぼんぬ」
シュバルツを何度も呼んで怒鳴られたサイサは三角座りをする。サイサに取って、小石を蹴り飛ばす程度の依頼でも、シュバルツに取っては命懸けなのだ。
先程から何度も舌打ちをするシュバルツ。何度も相討ちを狙ってはいるが、微妙に上手く行かず苛立ちが募るばかりである。
普段なら剣の通らない厄介な相手は避けているのだが、精霊の話で平常心を欠いたシュバルツは内容をよく読まずに依頼を受けてしまった。明らかに一人で請け負うような依頼じゃない。というかBランクの依頼じゃない。
「おわッ!?」
魔物の突進を避けていると足がずるっと滑る。体勢を崩し掛けたがどうにか踏ん張り、転ぶことだけはどうにか回避する。が、相手は二匹だ。
シュバルツが足を滑らせてからもう一匹が反応し、突進を仕掛けた。シュバルツは息の呑み、顔をひきつらせながら突きの構えを取る。
「飽きた」
瞬間、横腹を勢いよく殴られたように魔物が吹っ飛ぶ。突然の事にシュバルツは放心する。
「流石に待つのに飽きた。時間掛けすぎだろシュー」
言いながら、突進してきた残りの一匹を回し蹴りをするサイサ。景気よく吹き飛ぶ魔物は岩を粉砕してようやく止まった。
「ぁ――……っていやいや!?明らかに人間じゃ出来ないからそんな芸当!」
「あん?俺はこうなる前にはもう出来たぞ?」
「無茶苦茶過ぎだろ……」
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