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「あーらあんた、見慣れない犬ねえ?」
この子猫のいる穴を見詰めていた野良犬のキィオに、今さっきの白猫がゆっくりとやって来た。
「ふつくしい・・・」
キィオは、その美しい白猫の毛並みにうっとりした。
「あんた、誰?」
キィオは慌てた。
「じ、自分はカラス・・・」
「はあ?」
「『旅カラス』の『キィオ』と申します!!」
「『旅カラス』の野良犬ねえ・・・ロマンじゃね?ふふん。あたしは、『シェリー』。隣町の空き家を塒にしてる、『地域猫』よ。ふふん。」
白猫のシェリーは、右耳の切れ目を前肢で掻いて微笑んだ。
「あたいは、元雌猫。名前は『シェリー』!!
人間に去勢されて、只の『地域猫』よ。
でも、まだ雌猫の母性本能が疼くみたい・・・
あの奥の三匹の子猫が、いとおしくて、悲しくて、悲しくて・・・」
みゃーーーーー!!
みゃーーーーー!!
みゃーーーーー!!
ガレージ奥の穴の中では、三匹の産まれてばかりの赤ん坊子猫が寄り添って悲しげに鳴いていた。
「この子ね、母猫に捨てられたのよ。母猫がまた帰ってくると思ってるのよ・・・なのに、この子母猫を呼んでるのよ・・・母猫を・・・
許せないわ・・・産み捨てた母猫・・・!!死んじゃうよ・・・ほっといたら・・・何処に行ったの・・・?母猫・・・!!」
白猫のシェリーは、目から涙をボロボロ流して言った。
「シェリーちゃん、君、雌猫じゃん!『元』だけど。何で君が育てないの?」
野良犬のキィオは、ふてぶてしく言った。
「何言ってんの!『地域猫』として去勢されてなきゃ、とっくの昔に育てたわ!!
乳が出ない体なの!!救いたいのに・・・救いたいのに・・・!!」
ずぼっ!!
白猫のシェリーは、ガレージ奥の穴に体をつっこませた。
「うひょ?」
野良犬のキィオは、穴を塞いでいる板越しに覗いた。
みゃーーーーー!!
みゃーーーーー!!
みゃーーーーー!!
三匹の赤ん坊子猫は『母猫』の温もりを感じると、『母猫』のシェリーの体の周りをうにゃうにゃと動き回り、直ぐに吸い付きたい乳をまさぐり探した。
「ごめん・・・ごめんね・・・あたい、『母猫』じゃないの・・・ただ、あんた達がやるせなくて・・・悲しくて・・・いとおしくて・・・つい・・・
ごめんね・・・ごめんね・・・ごめんね・・・」
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