赤い浴槽

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さて、風呂に入ろうと言う時だった。 素っ裸になって浴室に足を踏み入れた少年は、思わず飛び出そうになった悲鳴をすんでのところで飲み込む。浴槽が真っ赤に染まっていた。それはもう見事な赤だった。絵の具でも溶かし込んだような赤い水が、浴槽の中にたっぷりと入っている。 何だこれ。 「…………」 素っ裸に屁っ放り腰という中々に間抜けな姿で、少年は恐る恐る浴槽に近付く。 人差し指をちゃぷんと謎の真っ赤な液体につけると、それはお湯だったらしい。適温だった。多分42度ぐらい。そう言えば湯気も立っている。少年的には今年最大級の事件を前に、全く気付かなかった。 明日、高校で友人達に話そう。 一周回って冷静になってきた少年は、そんな事を考えつつ、浴槽に顔を近付けてみた。くんくんと犬のように臭いを嗅ぐ。素っ裸で屁っ放り腰のまま浴槽の臭いを嗅ぐ姿は、誰にも見られたくない程度には残念だった。特に少年が密かに想いを寄せる少女になんて見られた日には、1年は立ち直れない自信がある。
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