第1章

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「・・・本日・・・で水死体が発見・・・事件性の有無はまだ未定との・・・なお昨日の水死体は・・・」 騒がしい食堂のテレビから嫌なニュースが聞こえてきた。 さすがは夏ということもあって川、プールなどで小学生が亡くなったニュースをここ最近良く流れる。 「はぁ」やらなきゃいけないことを思い出し溜息が出る。 「そんなにわかりやすい溜息をつくなよ」目の前でとんかつを頬張りながら、柏木高志は文句を言う。 約1年ぶりに会った高志は相変わらず子どもっぽい顔つきだった。小学生から知ってはいるがあの頃の悪ガキ風情がいまだに残っているから驚きだった。あなたはまだ悪ガキなのって聞いてしまいたいくらいだ。 「夏になると途端に水場での事故、事件が増える。夏帆は理由がわかるか?」 「なによ突然」少しドキリとする。考えてたことが分かったのだろうか。 「それはな、普段から水場にいないからだよ。人間は習慣の生き物なんだろ。慣れてないことを突然するからおかしなことになる。そんなに水で遊びたければ、普段から水と触れ合っているべきだ」高志はいつもなんでも決めつける癖がある。 「スキーしたい人はどうするのよ」 「常日頃から雪と戯れているべきだな」当たり前だろ、という表情をしながら答えた。 「ねえねえ、相談があるんだけど」 せっかく思い出したのだから聞いてみることにした。もしかしたらいいアイデアをもらえるかもしれない。なにしろ高志は元悪ガキだからだ。元をつけていいのかは知らないけど。 「え、相談?」 高志は持っていたとんかつを皿に戻すと、急に真面目な顔になり、猛禽類のような目付きで私を見た。その表情に少しドキリとしたが、高志もさすがに32歳ともなれば、大人の表情もできるんだなと思い、少しほっとする。悪ガキだって大人になる。
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