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『敬一、敬一!』
如月さんの声に、ハッとすると
『お前、山さんと親しかったろ、最近何か聞いてなかったか?』
「いえ…特に気になるような事は言ってませんでした」
『そうか、兎に角現場に急げ、後お前大丈夫か?』
「え?」
『山さんだよ、親代わりだったんだろう』
あ…
「大丈夫です」
俺は、それだけ言って電話を切った
「敬一!」
玄関に行くと、妹が呼び止めてきた
「朝飯、ちゃんと食わないと頭回らないだろ」
渡されたのは、サランラップに包まれたオニギリだった
「サンキュー、行って来る」
「行って来い」
玄関を出て駐車場で俺は声をあげた
「俺のバイクがぁぁぁっ!」
「朝から煩いよ!」
「美紀!てめぇ何やってんだよ!」
「見りゃ分かんだろ!修理だよ修理!」
オイルで汚れた頬を拭って、隣に住む俺の幼なじみが言った
「お前、鑑識だろよ、事件知らねぇの?」
「知らない訳ないだろアタシの車貸してやるから早く現場行きな、鑑識は管轄外だから向こうの鑑識が出るよ」
美紀は車のキーを投げて寄越した
「悪い助かる」
「早く行きな」
俺は頷くと、車のエンジンをかけた
××町上沼、俺が産まれて育った町
上沼は都心と違い、山間にある小さな町だった、田園風景が広がり、静かで良い所だ
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