第1章

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覚悟していたとは言え、こんな形で帰郷するとは思ってなかったな… 山さん…… 俺の名前は、左沼敬一、22歳の新米刑事だ、妹の柚葉と都心のマンションに2人暮らし 父親は海外出張中、母親は居ない… 俺が10歳、柚葉が5歳の時に母親は忽然と消えた 失踪する原因も見つからず、何らかの事件に巻き込まれたのではないかと、当時は町全体で捜索されたが 結局、母親は見つからず捜索は打ち切られた 未だに母親が生きているのか死んでいるのか分からないままだった 山根刑事はその時の担当刑事だった 『お母さんは必ず見付けるからな』 ボロボロのコートにしわくちゃの笑顔が印象的な人だと、子供ながらに俺は思った 海外出張の多い父親に代わって、良く俺達の事を気にかけて会いに来てくれていた 高校に進学した頃、俺は警察官を目指そうと思った 母親を自分で捜し出したい、例え生きていなかったとしても、何故あの優しかった母親が俺達を置いて消えてしまったのか 俺は知りたかった 高校を卒業し、警察学校へ入った がむしゃらに勉強し、俺は警視庁捜査一課に配属された 警視庁捜査一課非科学課 正直、配属早々窓際かと、俺の心は折れそうだった 「そうかぁ、ウチの部署も賑やかになるなぁ」 久しぶりに会った山根さんは、俺が配属された部署の刑事部長になっていた 「敬一君、いや左沼刑事、これから宜しくな」 山根さんは、あの頃と変わらないしわくちゃな笑顔で言った ボロボロのコートも相変わらずだった
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