第1章

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大池に着くと、よく腰掛けていた切株に座った。 そういえば、ここは俺の指定席だな。 懐かしいはずなのに景色は他人行儀だった。 蝉の声もせず、波紋1つない池。 空気は湿ったように涼しく、静まりかえっていた。さっきの開けっぴろげな青空は木の葉に覆われて見えず、何だか薄暗い。少々気味が悪く感じた。 「涼しくていいや」 気分を変えようと、誰に言うでもない独り言を呟き、物思いにふける。 それにしても、なんだか気持ちが悪い。お盆だし、この世の物じゃない何かが出て来てもおかしくないような雰囲気だ。 ここには、気味の悪い噂があった。 底なし沼に引きずり込む沼ババァに半魚人、河童などなど…… まぁ、当時の俺は興味津々で見てみたいと思っていたからあんまり怖いと思わなかったんだが、なかなか雰囲気のある池だと今更ながらに思った。
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